【毎日新聞】日本が核禁条約に反対するのは奇妙 中国や韓国などは「日本の正体見たり」の論を強めるかもしれない
原爆投下について作家の井上ひさしは「あの二個の原子爆弾は、日本人の上に落とされたばかりではなく、人間の存在全体に落とされたものだ」と書いた(「父と暮せば」)。被爆者たちは、核の存在から逃れられぬ20世紀の人間を代表して地獄の火で焼かれたのだと。至言である。この認識こそ核を考える原点だろう。ただ、今年の広島原爆忌の1カ月前、国連では122カ国の賛成で核兵器禁止条約が採択され、日本が反対に回ったために「唯一の被爆国」の事情は複雑になったのである。