【論説】出世のためだけにユダヤ人を虐殺した凡庸な男・アイヒマン…糾弾したアーレントは問う。あなたは何も考えず命令に従っていないか
1960年代から80年代にかけて活躍した映画監督フランソワ・トリュフォーが言ったそうだ。「人は皆、自分の仕事と映画批評家というふたつの職業を持っている」。だれもが映画を語る時代はとうに終わってしまったが、それでも、時には語りたくなることがある。▼「ハンナ・アーレント」という映画である。ユダヤ人女性哲学者ハンナ・アーレントがナチスドイツの大物アドルフ・アイヒマンの裁判を傍聴し、記録を発表する。