【国際】聖エリアン修道院、ISが破壊した異教徒共存の象徴 シリア
シリア中部の砂漠の中にあるカトリック修道院の壁には、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が残していった警告の言葉が書かれていた──「カリフのライオンたちはお前らをむさぼり食うためにここに来た」 シリア政府軍は今月、ISから中部ホムス(Homs)県の要衝カルヤタイン(Al-Qaryatain)を奪還した。
しかし、かつては宗教的寛容の象徴だったこの街への破壊行為は、もはや回復不能なほど大きなものだった。この街にあるカトリック教会の聖エリアン(Mar Elian)修道院もがれきの山と化した。
ISは2015年8月、爆発物とブルドーザーを使って5世紀に建築されたこの修道院を破壊した。英国を拠点とする非政府組織(NGO)「シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)」によると、ISは「神以外の崇拝に使われている」との名目で、イスラム教以外の宗教的な建造物を各地で破壊しているとされる。
現場には破壊された大理石の石棺が残されていた。その蓋の下に横たわっていたのは、信仰の放棄を拒みローマ人に殺されたホムス出身の聖エリアンの遺骨だった。修道院の司祭ジャック・モラウド(Jacques Mourad)神父も、イスラム教に改宗しないと殺すと脅迫され、15年10月に何とかISの魔の手を逃れてきたうちの1人だ。