川崎市の有料老人ﾎｰﾑの元職員が入居者をﾍﾞﾗﾝﾀﾞから落として殺害した容疑で逮捕されたことを受け､厚生労働省は都道府県知事に対し､介護施設での利用者への虐待防止の対応を強化することを求めた通知を発出した｡通知では､今月5日に公表した高齢者虐待に関する調査結果を示し､改めて虐待の早期発見や､相談や通報への迅速な対応に力を注ぐよう要望している｡さらに介護施設や事業所などへの通知の内容の周知や､それに従った指導の徹底も求めた｡【ただ正芳】
通知では､2014年度に発生した介護施設などの従事者らによる高齢者への虐待件数は300件に達し､13年度(221件)より大幅に増加したことや､今月15日には有料老人ﾎｰﾑの元職員が利用者に対する殺人容疑で逮捕されたことなどに言及｡その上で､昨年11月の通知で示した定期的な立ち入り調査の強化や､虐待が疑われる事案に対する｢抜き打ち監査｣の実施などの対応に取り組むよう改めて求めた｡さらに､市町村は都道府県も含めた関係機関と協力し､相談･通報の受け付け窓口の整備や事実確認の手順の標準化など､虐待防止のための体制構築に取り組むべきと指摘｡体制を整える際には､介護施設の介護従事者による利用者への虐待に対応できるかどうかの視点で検討する必要があるとした｡虐待を未然に防ぐための活動としては､介護従事者への研修や住民への啓発活動､介護保険ｻｰﾋﾞｽの適切な活用といった取り組みが重要とした｡また､今月5日に公表した高齢者虐待に関する調査結果では､市町村が虐待に関する相談･通報を受理した後､事実確認に乗り出すまでに4週間以上かかっている例も相当数あった｡そのため今回の通知では､相談･通報の受理から事実確認までの期間をできる限り短縮するため､▽情報提供者と高齢者との関係に留意しつつ､情報提供者自身による目撃なのか､推測情報なのか､誰からの伝聞情報なのかを明確にする▽情報提供者から聞き取りをする際には､虐待があった日時や回数など､情報をできるだけ数値化して確認する-など､具体的な対応のﾎﾟｲﾝﾄも示している｡医療介護CBﾆｭｰｽ 〈2016/2/19 20:00〉
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